稲葉研究室

稲葉 緑 准教授

稲葉 緑 准教授

プロフィール:
2006年、名古屋大学大学院環境学研究科社会環境学専攻、博士後期課程修了。博士(心理学)。2005年、独立行政法人交通安全環境研究所非常勤研究員、2006年より国立大学電気通信大学大学院情報システム学研究科助教。2009年ロンドン市立大学心理学科客員研究員。2013年よりJR東日本研究開発センター安全研究所研究員。研究テーマは情報セキュリティに関して望ましい行動を支援するシステム・仕組みの検討。日本心理学会、情報処理学会、日本応用心理学会等会員。情報処理学会論文誌編集委員、自動車技術会ヒューマンファクター部門委員、情報処理学会セキュリティ心理学とトラスト研究会運営委員、国土交通省運輸審議会運輸安全確保部会専門委員、総務省サイバーセキュリティ人材育成分科会構成員等。

Q:稲葉研究室での現在の主な研究テーマはどのようなものですか?
研究テーマは、リスクマネジメントの中でも、情報セキュリティや人間に関係する部分です。情報セキュリティに関する人間や組織の心理を明らかにし、情報セキュリティについて望ましい行動を支援する仕組みや教育について研究しています。

Q:稲葉研究室に在籍されている学生の皆さんやOBOGはどのような方々ですか。進学のきっかけや修了後の状況等について教えてください。
学生の皆さんの多くは社会人です。例えば、組織で情報セキュリティのマネジメント業務に携わっていて、従業員に情報セキュリティ対策行動をきちんと実行してほしいと考えている学生さんがいます。また、複数の組織を束ねる立場の方で、各組織の対策を促進したいと考えている方もいます。もちろん、大学を卒業されてから、すぐ入学される学生さんもいます。修了後は就職されたり、教職を目指されたりしています。 進学のきっかけは、大学や研究室のホームページをご覧になったり、オープンキャンパスや説明会、講演などで話を聞いて興味をもってくださったりと様々です。

Q:これまでに指導された学生の皆さんの研究テーマについて教えてください。
研究テーマは大きく4つに分けられます。
 1つ目は、「情報セキュリティ教育・問題行動対策」です。組織の従業員や青少年を対象として、どのような教育によってセキュリティインシデントの被害を防ぐことができるのかなどについて研究しています。
 2つ目は、「組織・人の情報セキュリティ対策を促す仕組み」です。対策に消極的な組織や人をどのように後押しすることで対策の進捗を促すことができるのか、行動経済学のナッジという考え方を応用して検討します。
 3つ目が、「信頼を基盤とする情報化社会の構築」に関する研究です。インターネットの世界は無味乾燥なものと思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、むしろ、これまで以上に人や組織の信頼が重要になっています。このような信頼に関するコミュニケーションをサポートする仕組みについて研究しています。
 最後は、「セキュリティインシデントを誘発する心理的問題」です。インターネットやSNSなどの利用時に起こるインシデント、悪意のある人からの攻撃に対する被害の多くは、人間の心理や行動そのものに起因しています。これを明らかにすることを目的とします。上の3つの研究テーマでも人の心について理解する必要がありますが、より心理学的・概念的に掘り下げようとするテーマです。
 いずれの研究テーマでも、実験や調査を実施して自分の考えの良さや妥当性を実データで示すことを重視しています。

Q:稲葉研究室ではどのような教育をされていますか。ゼミ、研究室ミーティングや個別指導等のスタイルについて教えてください。
学生さんが興味をもったトピックの中から、私も一緒に考えて研究テーマを決めます。その後、大学内での発表や研究審査、学会発表などのスケジュールに合わせて研究を進めるよう指導します。ゼミは週1回、通常は1人の学生さんが担当します。それまでに勉強してきたこと、あるいは、私が課題を出すことも多いので、その成果を発表してもらったりして、研究室全体でディスカッションします。また、週1回のゼミでは時間が足りないため、私が各学生さんに対して適宜、個人指導をしています。

Q:どんな経験や関心を持つ学生に進学してほしいですか?
情報セキュリティに関して「なぜこんなことをするのだろう」、「なぜ言うことを聞いてくれないのだろう」と人や組織に対して疑問を持っていることが出発点です。その上で、セキュアな状態に導くためにはどうすれば良いかについて関心を持っている方に進学してほしいと思っています。

Q:稲葉研究室に興味を持っている方へ向けてメッセージをお願いします。
情報セキュリティに関するインシデントの80%以上は人間が関係していると言われています。しかし、インシデントを起こそうと思って行動する人は、ほとんどいません。我々のどんな行動も、本人にとっては、また、その本人が置かれた状況では、合理的で妥当な判断の結果として起こっていることを見逃してはいけません。稲葉研究室の学生さんは、この事実を受け容れた上で、どのように人や組織、あるいはその環境に働きかけれることで情報セキュリティのインシデントやトラブルを防ぐことができるのかについて日々考えています。ご興味のある方は、是非、稲葉研究室にアクセスしてください。

稲葉研究室写真