不確実性下の意思決定(前期2単位)

客員教授 廣松 毅

1.授業のねらい

情報セキュリティの分野においては、リスク=事故の発生確率x事故による損失(これは、統計学的には期待損失と呼ばれるものである)と表わされることが多い。しかしこのリスクのとらえ方は必ずしも一般的ではない。リスクの本質はそれが不確実であること、そしてその発生と影響の大きさにちらばり、バラツキがあることである。
この講義では、リスクは不確実性の一形態であるという考え方に立って、不確実性を表現する数学モデルすなわち確率・確率分布に関する基礎、および不確実性の下での意思決定(合理的な行動)の基本的な考え方について講義を行うことをねらいとしている。
具体的に、講義は大きく次の3つの内容を取り扱う。①A.Waldの「統計的決定関数」に基づく意思決定論におけるベイズ解(この場合の不確実性の源泉は自然環境などの変動)、②J.von Neumann & O.Morgenstern の「複数のプレーヤーによって行われるゲーム」の理論(この場合の不確実性の源泉は利害の対立する相手の行動)、③期待効用最大化行動に関する心理学からの批判としてのD.Kahneman & A.Tveskyのプロスペクト理論と行動経済学である。

2.到達目標

  • リスクを不確実性という観点からとらえることの重要性
  • 不確実性の数学的モデルである確率・確率分布の基礎に関する理解
  • 不確実性の下で意思決定(合理的な行動)の理解とそれに関する批判

3.授業計画(各回毎の内容)

第1回 イントロダクション
第2回 不確実性の数学モデルとしての確率1:確率の公理と重要な定理
第3回 同 その2:確率変数と確率分布
第4回 同 その3:代表的な離散的な確率分布
第5回 同 その4:代表的な連続的な確率分布
第6回 不確実性下の意思決定1:意思決定者が一人の場合
第7回 同 その2:利得行列と行動の選択
第8回 同 その3:決定基準
第9回 ゲームの理論1:ゲームの枠組み
第10回 同 その2:二人非協力零和ゲーム
第11回 同 その3:n人ゲーム
第12回 プロスペクト理論1
第13回 同 その2
第14回 行動経済学1
第15回 同 その2
※受講生の予備知識などによって、多少変更することもありうる。

4.教科書(学生が履修するにあたって必携のもの)

特に指定しない。

5.参考書

標準的な確率論、意思決定理論、ゲームの理論、行動経済学に関するものを必要に応じてその都度通知する。

6.関連科目

  • 統計的方法論:統計的な実証分析を行うための手法に関する科目
  • リスクマネジメントと情報セキュリティ
  • 情報セキュリティ心理学:心理学の観点から情報セキュリティを扱う科目
  • 特設講義(データ・サイエンスとアナリティクス)

7.成績評価の方法と基準

レポートによって評価する。

8その他(特記事項)

特になし。。