数論基礎(前期2単位)

教授 有田 正剛

1.授業のねらい

本講義では、暗号技術をモチベーションとして数論の基礎を学ぶ。まず、第一部では合同式、ユークリッドの互除法、オイラーの定理などの古典的な数論を学ぶ。つぎに、第二部で、アーベル群や可換環、有限体などの抽象的代数学を用いることで、それら古典的な内容が一般化され、より広い現象に適用できることを見る。さらに、第三部では、格子暗号の基礎となる、格子の数学を学ぶ。

2.到達目標

・暗号技術を理解するのに必要な数論的知識を習得する
・抽象的代数学の概念を理解する
・格子の数学の基本的知識を習得する
・数学的方法論(定義、ステートメント、証明)を身につける

3.授業計画と開講形態

全回、教室での対面授業として開催する。

[古典的整数論]
第1回 整数の基本的性質
第2回 約数、倍数、イデアル
第3回 ユークリッドの互除法
第4回 拡張ユークリッドの互除法
第5回 合同式
第6回 一次合同方程式の解法
第7回 合同類とオイラーの定理

[抽象代数学]
第8回 アーベル群
第9回 剰余群と群準同型
第10回 可換環
第11回 有限体

[格子の数学]
第12回 格子と基本概念
第13回 逐次最小、Minkowskiの不等式
第14回 Gram-Schmidt直交化
第15回 LLLアルゴリズム

4.教科書(学生が履修するにあたって必携のもの)

特に指定しない。

5.参考書

・高木貞治,「初等整数論講義」, 共立出版.

・Victor Shoup, "A Computational Introduction To Number Theory And Algebra", Cambridge Univ.

・Jeffrey Hoffstein, Jill Pipher, J.H. Silverman, "An Introduction to Mathematical Cryptography", Springer New York.

6.関連科目

アルゴリズム基礎、暗号・認証と社会制度、暗号プロトコル、量子計算と暗号理論と関連がある。

7.成績評価の方法と基準

到達目標を充足しているかどうかを評価の基準として、期末レポートにより評価する(90%)。なお、質問など授業への積極的な参加も評価対象とする(10%)。